持ち株制度とは何か?メリット・デメリットを分かりやすく解説!
「持ち株制度」という言葉を一度は聞いたことがあるものの、あまり理解できていない人も多いと思います。
この記事ではそのような方のために持ち株制度の概要やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説していきます。
持ち株制度を利用したいと考えている方は是非、最後までご覧ください。
持ち株制度とは何か?
持ち株制度とは勤務先の株式(自社株)を購入できる制度のことです。
上場企業を中心に福利厚生の一環として導入されるケースが多く、東京証券取引所に上場している企業の約9割に持株制度があります。
持株制度は、一般的に「従業員持株会」が中心となって運用しているため、自社株を購入するには、まず持株会に加入します。
持株会の会員になると毎月の給与から一定の掛け金が天引きされ、持株会を通して株式を購入することができます。
持ち株制度の4つのメリット
①奨励金が出る
持株制度の最大のメリットは、会社から奨励金が出ることです。
例えば、給与から天引きされる金額を10,000円で設定しており、奨励金が10%だとすると、従業員は10,000円分で11,000円分の自社株が毎月購入できるということです。
持株制度がある会社の96.6%が奨励金を支給しています。
銀行に預金しても近年は超低金利時代のため、持株制度は従業員にとって資産を増やせる大きなメリットとなります。
②配当金・キャピタルゲインを得られる
会社で出た利益の一部を株主に還元するのが配当金です。
配当金は「一株あたりいくら」という形で還元されるので、株式数を多く持っているほどリターンが大きくなります。
また、購入時の価格に対して株価が上昇すればその差額が収益となります。この収益がキャピタルゲインです。
持株制度で毎月株の購入を続けていくと、まとまった株式数を保有できるため、株価上昇時のキャピタルゲインや受け取れる配当金がより増えるというメリットがあります。
③少額から株式を買える
通常、株式は100株単位でしか売買できないため、1株1,000円の株式を購入するには最低でも10万円の資金が手元に必要です。
しかし、持株制度は「ひと口1,000円」など少額でも購入できるため、少額から始められます。
株式投資をやったことがない従業員にとっては購入のハードルが低く、始めやすい特徴があります。
投資したことを忘れていて、会社の業績が上がったときに思いがけず大きなお金が手に入ったという人もいるようです。
④インサイダー取引が適用されない
インサイダー取引とは従業員や役員、大株主などの会社関係者が株価に影響を与える非公表情報を知った上で、株の売却を行うことを指します。
インサイダー取引は公平な株式市場を守るために規制されています。
しかし、従業員株主会は定期的な株の売買を目的として設置しているため、インサイダー取引が適用されません。
持ち株制度の4つのデメリット
①給与と資産が会社に依存する
会社の業績が落ちた場合、株価も下落する可能性が高くなるため、保有資産が目減りすることがあります。
また、最悪の場合は、勤務先が倒産して収入と資産の両方を失う事態が想定されます。
投資の原則を言い表した言葉に、「卵は一つのカゴに盛るな」というものがあります。
一つのカゴに卵を入れると落としたときに全て割れてしまいますが、別々のカゴに入れておけば、一方を落としても他方の卵は無事です。
これと同様に、収入と資産の両方を依存する形になる持株制度は、リスクの分散ができないというデメリットがあります。
②株主優待がない
株式投資を行う目的の一つに、株主優待を受けられることが挙げられます。
例えば、お食事券やカタログギフト、自社商品の詰め合わせなど、多くの上場企業では株主に対してさまざまな優待を実施しています。
しかし、従業員に対する持株制度では、株式を購入しても株主優待は受けられません。
これは、自社株の購入を個人名義の証券口座で行っているわけではなく、持株会の名義で行っているためです。
また、株主総会にも参加することができないデメリットもあります。
③好きなタイミングで売却できない
持株制度は株式を売却する際の手続きが複雑で、好きなタイミングで売却することができません。
持株会から自分の証券口座に移す際に上司や経理部の承認が必要な場合があり、時間がかかります。
そのため、株価が上がった/下がったタイミングで売却したくても、手続きをしている間に売り時を逃して損をする可能性があります。
また、自社の決算内容や新商品の情報などを公表前に知った場合は、情報が公表されるまで株式を売却することができません。
会社関係者が未公表の重要情報を利用して株式を売買する「インサイダー取引」は、ほかの投資者が不利になるため厳しく規制されています。
持株会によっては、決算時期や新商品の発売前など、株価の変動が予測される時期に売却を一律で禁止される場合もあります。
④利益に対して税金がかかる
持株制度に限らず、株式を利用して配当金や売却益を得ると、利益に対して約20%の税金が原則としてかかります。
一方で、持株制度と同じように比較的気軽に投資を始めることができるiDeCoやNISA、つみたてNISAなどの投資制度は、運用益が非課税になります。
そのため、これらの制度で得た運用益は税金が引かれず、そのまま利益になります。
持株制度は運用益が非課税になる投資制度と比べると税金面で不利といえます。
まとめ
この記事では持ち株制度のメリット・デメリットなどをそれぞれ4つご紹介しました。
持ち株制度のメリット
- 奨励金が出る
- 配当金・キャピタルゲインを得られる
- 少額から株式を買える
- インサイダー取引が適用されない
持ち株制度のデメリット
- 給与と資産が会社に依存する
- 株主優待がない
- 好きなタイミングで売却できない
- 利益に対して税金がかかる
持株制度は会社から奨励金が出るため一見お得に感じられますが、通常の株式投資とは違って売却に手間がかかったり、株主優待が得られなかったりといったデメリットもあります。
しかし、自社の株を保有することで会社の株価をチェックしたり、株価が上がった理由、下がった理由を考えるきっかけになったりする場合もあります。
これ自体は投資の勉強にもなりますし、株主目線で自分の会社を見ることで事業の修正点なども見えるかもしれません。
そのため、しっかりとリスク分散しながら余剰資金で小額投資していくのが一番良い形だと言えるでしょう。